「異常なし」と言われても、つらいあなたへ ― 東洋医学の「未病」という考え方

東洋医学

こんにちは。鍼灸師の菅野詩乃です。

 

体がだるくて、食欲がわかない。

よく眠れない。なんとなく、いつも疲れている。

 

けれど病院で検査を受けると、

「数値は正常ですよ」「異常なしです」と言われる。

 

数字の上では問題がない。でも、確かにつらい。

その行き場のないもやもやを、抱えたことはありませんか。

 

今日はその「つらさ」に、東洋医学がどんなふうに寄り添えるのか、

鍼灸師の視点からお話しさせていただきたいと思います。

 

検査に映らない不調にも、ちゃんと理由がある

西洋医学は、画像や数値で体をくわしく調べる、とても頼もしい医学です。

けれど、その精密なまなざしでも、

まだうまくすくいきれない領域があります。

 

「検査では異常が出ないけれど、本人はつらい」

そんな、言葉にならないSOSです。

 

東洋医学は、ここをいちばん得意としています。

 

西洋医学とはちがう「もう一枚の地図」を持って、

あなたの不調の居場所をさがしていくのです。

 

病気の一歩手前、それが「未病」

東洋医学には、「未病(みびょう)を治す」という、

いちばん大切な目標があります。

 

病気か、健康か。

東洋医学はそのはざまを、

ゆるやかなグラデーションとして捉えます。

検査では異常が出なくても、

あなたが「つらい」と感じているなら。

それは体の中のバランスが、静かに傾きはじめたサインです。

 

東洋医学では、その体内のバランスをみるのに

「陰陽(いんよう)」「気・血・水(き・けつ・すい)」などの考え方を使います。

 

まだ病気になりきっていない、この一歩手前。

ここでそっと手当てをしておくことが、

将来の大きな不調を防ぐ、やさしい備えになります。

 

あなたの体が出す「お便り」を読み解く

では、数値に出ない不調を、どうやって見つけるのでしょう。

 

東洋医学には、四診(ししん)という独自の診察があります。

 

体の表面にあらわれる、ほんのわずかな変化を、

五感で丁寧に読み解いていく方法です。

舌をみる。

舌は内臓を映す鏡です。

舌の先が赤ければ、「心(しん)」が疲れて高ぶっているサイン。

舌のふちに歯型がついていれば、胃腸をつかさどる「脾(ひ)」が弱って、

むくんでいるのかもしれません。

脈をみる。

脈からは、心拍だけでなく、

あなたの生命エネルギー、「胃の気」の強さを感じ取ります。

気が、どこで滞っているのか。 その流れを、指先で聴きます。

お腹や背中をみる。

お腹と背中は、全身の縮図です。

触れたときの冷えや硬さ、力のないフニャフニャとした感触から、

五臓六腑のどこが助けを求めているのかを、そっと突き止めていきます。

 

あなたの体の表面には、今の不調の理由が、ちゃんと現れているのです。

私たちは、それを見ています。

 

症状を抑えるのではなく、根っこから立て直す

「異常なし」と言われる不調の多くは、

生命エネルギーである「気」の滞りや、不足からきています。

 

東洋医学では、つらい症状にふたをするのではなく、

その奥にある本当の原因を見極めます。

食欲がない、胃がもたれる。

胃腸(脾)の力を補い、栄養を全身へ届ける働きを取り戻します。

不安で、眠れない。

高ぶった「心」の熱をしずめ、心の落ち着きを整えます。

慢性的な、こり。

滞った「気」や「血」の流れを交通整理して、めぐりを取り戻します。

 

鍼やお灸は、あなたの体がもともと持っている「治る力」を、

そっと呼び起こすスイッチのようなものです。

 

おわりに ― 自分という「自然」を、いたわる

東洋医学の診察は、ただ体を調べる作業ではありません。

あなたという一つの自然に、静かに耳をすませる時間だと、

わたしたちは考えています。

 

病院で「異常なし」と言われて、行き場のない不安を抱えている方も、

どうか一人で抱えこまないでください。

 

あなたの体が差し出してくれた「お便り」を、

いっしょに読み解いていきましょう。

 

未病のうちに、自分をいたわること。

それは、自分自身の命を慈しむ、いちばん贅沢な養生なのです。


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